融資・資金繰り
運転資金が資金繰りに与える悪い影響【運転資金は「借りる」が鉄則】
資金繰りを楽にしたい会社の社長
「借金があるわけでもなく、ずっと黒字経営を続けているのに、いつも資金繰りがしんどい…。運転資金が影響していると思うが、何をどうすれば良いのかわからない…。資金繰りを良くするための対処方法があれば教えてほしい。」
こういったお悩みに答えます。
本記事のゴール
3分程で読み終わります。読み終えた後には、運転資金が資金繰りを悪化させる原因がわかり、あなたの会社の資金繰りを楽にするためのヒントが手に入ります。
こんにちは。近藤税理士事務所の近藤です。
私は、税理士事務所・一般事業会社・企業再生コンサルティング会社勤務を経て独立した少し変わった経歴を持つ税理士です。
税理士業界から一度離れ、倒産危機に陥る会社をたくさん見てきたからこそ、「数字の重要性」を再認識することができました。
その貴重な経験のなかで得た「気付き」や「ノウハウ」をブログに綴って情報発信しています。
「経営を数字という言葉で語れるようになること」
そうすれば、あなたの会社は必ず変われます。
運転資金とは
まずは、「運転資金」の定義から確認していきましょう。
運転資金とは、事業を行うにあたって必要な資金をいい、次の算式で計算されます。
運転資金 = 売上債権 + 棚卸資産 – 仕入債務
(売上債権 = 受取手形 + 売掛金)
(棚卸資産 = 商品や材料・製品などの在庫)
(仕入債務 = 支払手形 + 買掛金)
売上債権や棚卸資産は現金化まで時間を要し、一方で仕入債務は支払いが繰り延べられていることから、その差額が資金の不足額、つまり、その事業において必要な運転資金となります。
それでは、どのような場合に運転資金が資金繰りに悪影響を及ぼすのでしょうか?
続きを確認していきましょう。
なぜ、運転資金が資金繰りを悪化させるのか…?
運転資金が資金繰りに悪影響を及ぼすのは、どのような場合でしょうか…?
それは、「運転資金が異常に増加した場合」です。
売上が伸びれば売掛金や買掛金も大きくなるでしょうし、必要な在庫量も増えてくることでしょう。その結果としての運転資金の増加が適正であれば問題ないのですが、何らかの事情でバランスが崩れると…資金的に問題が生じてきます。
事業を行うにあたって、運転資金は必ず生じます。だからこそ、運転資金が異常に増加しないように適切にコントロールしていくことが、資金繰り管理上とても大切になってきます。
運転資金をコントロールするための対処方法
それでは、運転資金をコントロールするための対処方法を項目別に見ていきましょう。
売上債権
「売上債権の回収条件」と「仕入債務の支払条件」をバランスさせましょう。理想は、「回収してから支払う」です。回収条件の悪い取引だったら…極端な言い方ですが、そんな売上は要りません。売れば売るほどお金が無くなっていく結果となります。
得意先毎の入金消込もしっかり行いましょう。きちんと入金してくれない得意先に売上げていくと、どんどん運転資金が膨らんでいきますので注意が必要です。
また、得意先の倒産等による回収不能リスクの観点から、与信管理も行うようにしましょう。
棚卸資産
あなたの会社としての必要な在庫量を見極めましょう。たくさんの商品を持つ方が売りやすいのかもしれませんが、それではいくらお金があっても足りません。「在庫はお金」と考えて、不用意に在庫が増えないように注意しましょう。
また、在庫の年齢管理も徹底して行いましょう。長い間売れずに滞留している在庫は、保管料や目に見えないコストがかかっているものです。思い切って処分することも必要です。
仕入債務
先ほどの売上債権と同様に、「売上債権の回収条件」と「仕入債務の支払条件」をバランスさせましょう。仕入債務は、売上債権より先に発生しますので、不用意に支払サイトを早めるような取引をしてしまうと運転資金の増加に繋がり、資金繰りの悪化を招きます。
また、支払サイトを伸ばす手段として「支払手形」を振り出すことも考えられますが、あまりお勧めしません。手形は二度不渡りを出すと手形交換所の取引停止となり、事実上の倒産となります。
倒産リスクを回避するためにも、できるだけ支払手形に頼らない資金繰りを目指しましょう。
運転資金をコントロールするための取組順序
運転資金をコントロールするための対処方法を確認しましたが、次の順序で取り組んでみてはいかがでしょう。
- 取組順序①:棚卸資産
- 取組順序②:売上債権管理と与信管理
- 取組順序③:売上債権と仕入債務の取引条件の見直し
- 取組順序④:支払手形の計画的縮小
取組順序①:棚卸資産
最初に取り組みたいのは、棚卸資産です。これは、自社だけでできることですから取り組みやすいと思います。
取組順序②:売上債権管理と与信管理
その次は、売上債権の滞留債権管理や与信管理です。これも自社だけでできますから、回収の悪い得意先に不用意に販売しないよう管理を徹底しましょう。
取組順序③:売上債権と仕入債務の取引条件の見直し
そして、売上債権と仕入債務の取引条件の見直しです。これは、相手があることなので注意が必要です。よく資金繰りに関する書籍等で、「資金繰りを改善させるためには、回収サイトを短く、支払サイトを長くすれば良い」みたいなことが書かれていますが、そんな簡単な話ではありません。
自社の資金繰りが改善するということは、相手にとっては資金繰りが悪化することを意味します。取引先との信頼関係にも影響してきますので、取引条件を見直す必要がある場合には、取引先にその経緯や理由等を説明し、誠意を持って交渉するように心がけましょう。
取組順序④:支払手形の計画的縮小
最後に支払手形です。支払手形を減らせば資金繰り上マイナスになりますが、倒産リスクを回避する観点から書いております。
支払手形は麻薬のようなもので、一度振り出すとなかなか減らすことができません。また、急激に減らすと資金繰りがたいへんな状況になるので難しいところです。
支払手形は「あるだけ」で倒産リスクが高まるので、少しずつでも計画的に減らしていけるように取り組んでいきましょう。
運転資金は「借りる」が鉄則
基本的に「在庫を持たない現金商売」でもない限り、運転資金は必ず生じます。
つまり、どんな事業であっても運転資金に見合うお金は必ず不足するので、そこは銀行から融資を受けるのが正解です。
正常な運転資金については、銀行も融資してくれます。資金繰りを楽にするためにも、そこは迷わず融資を申し込みましょう。
運転資金は「借りる」が鉄則です。
まとめ
運転資金が資金繰りに与える悪い影響について書いてきました。
運転資金が資金繰りに悪影響を及ぼすのは、「運転資金が異常に増加した場合」です。
事業を行うにあたって、運転資金は必ず生じます。だからこそ、資金繰りを楽にするためには、運転資金が異常に増加しないように適切にコントロールすることが求められるのです。
この記事で書いた対処方法で運転資金をコントロールできるようになれば、間違いなく資金繰りは楽になります。
また、きちんとコントロールされた運転資金であれば、銀行も融資してくれます。資金繰りを楽にするためにも、運転資金は迷わずに銀行から借りましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ、下記の当事務所サービスページもご確認いただけると嬉しいです。