経営管理
経常利益率の計算方法や目安とは?【損益分岐点を意識した経営の重要性】
売上高ばかりに気を取られる社長
「経常利益は大事って聞くけど…経常利益率は何%くらいあれば良いのだろう…?自分の会社が目指すべき経常利益率の考え方や経営への活かし方を教えてください。」
こういったお悩みに答えます。
本記事のゴール
3分程で読み終わります。読み終えた後には、経常利益率の考え方がガラリと変わり、「あなたの会社が目指すべき経常利益率」がわかるようになります。
こんにちは。近藤税理士事務所の近藤です。
私は、税理士事務所・一般事業会社・企業再生コンサルティング会社勤務を経て独立した少し変わった経歴を持つ税理士です。
税理士業界から一度離れ、倒産危機に陥る会社をたくさん見てきたからこそ、「数字の重要性」を再認識することができました。
その貴重な経験のなかで得た「気付き」や「ノウハウ」をブログに綴って情報発信しています。
「経営を数字という言葉で語れるようになること」
そうすれば、あなたの会社は必ず変われます。
もし、あなたが「本気で会社を強くしたい!」とお考えなら…お気軽に無料相談をご利用ください。
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経常利益率とは?その計算方法や目安は?
経常利益率とは、「売上高」に対する「経常利益」の割合であり、会社の本来の収益力を判断する指標です。
会社は、儲けるためにビジネスをしています。そして、そのビジネスで儲けた金額を表すのが経常利益ですから、あなたの会社の本来の収益力として「これくらいの経常利益は出せるはず」という指標をあらかじめ持っておくことは、経営管理上とても有用なことです。
よく、「経常利益率は、最低でも◯%はあったほうが良い」といった話を聞くこともあるかと思いますが、業種やビジネスモデルによる違い、個々の会社の特性があるので、そのような画一的な指標には全く意味がありません。
実は、あなたの会社としての「適正な経常利益率」というのがあるのです。
この機会に一緒に考えていきましょう。
経常利益率の計算方法
経常利益率の計算方法は、下記の通り。
経常利益率 = 経常利益 ÷ 売上高
例えば、売上高が1,000で経常利益が20だった場合、経常利益率は2%(20 ÷ 1,000)となります。
この「2%」が高いのか…?それとも低いのか…?
これについては、先ほども言いました通り、画一的な指標で判断することはできませんし、そんなことに意味はありません。
大事なのは、それが「あなたの会社として適正なのかどうか」ということです。
実際に、あなたの会社の経常利益率はどれくらいでしょうか…?
そして、その経常利益率は適正なのでしょうか…?
経常利益率の目安
経常利益率の目安は、下記の計算式で確認することができます。
経常利益率の目安 = 粗利益率 ×(1 – 目標とする損益分岐点比率)
(粗利益率 = 限界利益 ÷ 売上高)
(限界利益 = 売上高 – 変動費)
(損益分岐点比率 = 固定費 ÷ 限界利益)
経常利益率の目安を計算するためには、「損益分岐点」が大きく関係してきます。
つまり、あなたの会社が「目標とする損益分岐点比率」を達成した場合の経常利益率こそが、あなたの会社としての経常利益率の目安なのです。
現状の損益分岐点比率が、あなたの会社にとって理想的な値であるのなら、いまのままの経常利益率で特に問題ありません。
でも、現状の損益分岐点比率が高いと判断するなら…
「目標とする損益分岐点比率」を上記の計算式に当てはめて計算してください。それが、あなたの会社が目指すべき経常利益率です。
ちなみにですが…
経常利益率の計算式として、下記の2つの計算結果は同じになります。
経常利益率 = 経常利益 ÷ 売上高
経常利益率 = 粗利益率 ×(1 – 損益分岐点比率)
(細かい方程式の説明は割愛しますが、一度あなたの会社の実数を使って計算してみてください。同じ計算結果になるはずです。)
(参考記事)
超簡単!変動費と固定費の分け方【もう固変分解に悩まない】
経常利益率を改善するためにやるべきこと
経常利益率を改善するためにやるべきこと、それは…
ズバリ「損益分岐点比率の改善」です。
つまり、「限界利益(粗利総額)の最大化」と「固定費のコントロール」、これに尽きます。
経常利益率の目安の計算に「損益分岐点」が大きく関係していることは、先述の通りです。
(損益分岐点比率の計算式)
損益分岐点比率 = 固定費 ÷ 限界利益
この計算式の通り、損益分岐点比率は「限界利益(粗利総額)」と「固定費」とのバランスで決まります。
つまり、「限界利益(粗利総額)」を増やすか「固定費」を減らせば損益分岐点比率を改善させることができ、結果として経常利益率を改善させることができます。
売上高を伸ばしたからといって、必ずしも経常利益が増えるわけではありません。経常利益とは「限界利益(粗利総額)」と「固定費」との差額で、このバランスが改善するから経常利益が増えるのです。
これこそが「利益が出るカラクリ」であり、一番のミソといえます。
もし、あなたの会社の損益分岐点比率が高いと感じているのなら、ぜひとも損益分岐点比率の改善に取り組んでください。
そうすれば、経常利益率は必ず改善されます。
次は、具体的にモデルケースの計算例を確認しながらイメージしていきましょう。
モデルケースを使っての計算例
現状把握
- 売上高:1,000、変動費:600、固定費:380
- つまり、
限界利益は400(売上高1,000 – 変動費600)であり、粗利益率は40%(限界利益400 ÷ 売上高1,000)である。 - 経常利益は20(限界利益400 – 固定費380)、経常利益率は2%(経常利益20 ÷ 売上高1,000)となる。
- 損益分岐点比率は95%(固定費380 ÷ 限界利益400)と計算される。
(モデルケースの概要)
この場合の経常利益率2%が高いのか?それとも低いのか?ということなのですが…
分析・検証
現状の問題点として、損益分岐点比率95%というのが高過ぎるように思います。
これは、赤字ではないものの売上高が5%(1 – 0.95)下がれば赤字に転落してしまう状態なので、「危険水準」にあるといえます。このままではいけません。
そこで、このケースでは損益分岐点比率を90%以下にすることを目標にすることとします。
損益分岐点比率は、「限界利益(粗利総額)」と「固定費」とのバランスで決まるので、損益分岐点比率を改善させるためには「限界利益(粗利総額)」を増やすか「固定費」を減らす必要があります。
(参考:一般的な損益分岐点比率の目安)
- 60%未満:【超優良企業】全く問題なし!何でもできます
- 60%~80%:【優良企業】優秀です!節税をしましょう
- 81%~90%:【普通企業】健全な状態です
- 91%~100%:【危険水準】要注意!油断は禁物です
- 101%~200%:【赤字企業】早急に改善!このままでは…
- 200%超:【倒産路線】破産or社長交代
改善・結論
- 限界利益を増やすために仕入先と交渉。変動費(仕入原価)の削減で粗利益率を2%改善できることが判明した。
- 固定費については、全面的に見直した結果、10削減できることがわかった。
(改善内容)
この改善内容により損益分岐点比率を算定すると、
固定費370(380 – 10)÷ 限界利益420(売上高1,000 × 粗利益率42%)= 88%
となり、損益分岐点比率を90%以下にすることができそうです。
そして、この場合の経常利益率の目安は5%(粗利益率42% ×(1 – 損益分岐点比率88%))と計算されます。
つまり、現状の経常利益率2%のままではダメで、変動費の見直しと固定費の削減によって改善される経常利益率5%が、このモデルケースでの「経常利益率の目安」となるのです。
経常利益率を考えるうえで最も大切なこと
「損益分岐点を意識した経営を実践する!」
経常利益率を考えるうえで最も大切なことです。
何度も言いますが、経常利益率に「損益分岐点」が大きく関係していることは、これまでに書いてきたとおりです。
もし、あなたがあなたの会社の経常利益率が低いと感じているのなら…
その原因は、売上高が小さいからではありません。経費が多いからというわけでもありません。損益分岐点比率が高いことが原因なのです。
経常利益率の目安を持つことは、会社の経営管理上とても有用です。でも、経常利益率は「単なる結果」でしかないことも事実です。
あなたがやらなければならないことは、あなたの会社としての「適正な損益分岐点比率」を見極めて、その状態に持っていくことです。
それができれば、経常利益率は結果としてついてきます。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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